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特定秘密保護法案、本質的議論を! - 2013.12.05 Thu

 いよいよ臨時国会も大詰めを迎えようとしている。しかしここにきて、ある法案をめぐり与野党が対立し、国会がもめる事態に至っている。ある法案というのは、周知の「特定秘密の保護に関する法律案(特定秘密保護法案)」である。

 11月23日、中国が尖閣諸島を含む空域に「防空識別圏」を一方的に設定した。防空識別圏は国際法的根拠を持たないため、各国が独自で設定しているものだが、周辺諸国に不要な不安を与えないために、通常は事前に折衝や協議がある。しかし今回はこの折衝や協議は行われず、更にその上、日本・韓国・台湾の領域と重複して設定された。完全に中国の膨張主義的な挑発行為と言えるだろう。

 中国がこのような強硬姿勢を取る裏には、中国国民のフラストレーションを外に向けるしかない国内事情がある。中国は未だ選挙をやらない、事実上共産党一党独裁の国である。民衆の共産党政府への不満は、民主主義国家でない以上はけ口が無い。共産主義をとうの昔に捨ててしまった共産党は、ここ数年間はGDPを増大させる、つまり経済成長こそがその存在意義であった。しかしここにきてその経済成長もバブル崩壊とともに陰りを見せ始めた。共産主義を捨て、経済成長も止めてしまった共産党政府が存在する意義は、外に敵を作り、それに対抗し国民を守る「強い政府」を演じるしかない。そこで隣の日本を批判の対象としてナショナリズムを煽り、必死に求心力を保とうとしているのが現状だと言える。

 一方、それを注視してきた米国はどのように考えているのか。結論から言えば米国は中国とは対立したくない、経済的にも軍事的にも対立する余力が無いというのが現状だ。オバマ大統領の最大の関心事は「オバマ・ケアー」と呼ばれる医療・福祉制度の充実を中心とした内政であり、決して「世界の警察」などではない。その証拠に9月10日ホワイトハウスで行われたシリアに関するオバマ大統領の演説を見ると「米国は世界の警察官ではありません」と断言している。かつて米国には「モンロー主義」と言われる「不干渉・孤立主義政策」を取った時代があったが、まさに今のアメリカもそれと似た政策を選択しようとしている。

 「中国の台頭」と「米国の低迷」が今国際社会の秩序を変質させていることは様々なところで指摘されている。つまりそうした中で、今回中国が「防空識別圏」を設定したことは、中国の国内事情と米国の国内事情から、米国の抑止力が極東アジアにおいて効かなくなってきているということを意味している。

 では日本はどうすべきか。当然日米安保を基軸とする「米国頼みの安全保障体制」から「自主防衛体制」へと変換しなければならない。「アメリカ頼み」が通用しなくなってきているからである。しかし国内を見ると、集団的自衛権の行使さえ検討中の段階である。それでも少しずつでも安全保障体制の切り替えはしなければならない。今回のNSC設置も、特定秘密保護法の制定もそういう国際状況変化という文脈で行われていることをもっと私たちは自覚しなければならない。

 しかし最近のマスコミ報道を見ると、この特定秘密保護法案に関して、先に述べたような国際情勢の変化を全く報じずに、ただただ「知る権利の侵害」や「隠すべきではない情報も隠される」などという極めて恣意的で意図的な側面でのみ報じ、政府を批判しているようにしか見えない。

 そもそも今回の法案の中身を見ると、そうした国際情勢の変化と切り離して考えてみても、私は国家としてごく当たり前の内容になっていると考えている。これまでが情報に関しての法律が甘すぎたと言って良い。例えば今回の「特定秘密保護法案」のポイントとなる一つ目は罰則規定である。これまでは国家公務員法における守秘義務違反、つまり国家公務員が重要な情報を漏らした場合の罰則は、「懲役1年以下か罰金50万円以下」となっていた。これを「懲役10年以下か1千万円以下の罰金」というように強化しようというもの(特定秘密の保護に関する法律第21条)。しかしながら私は、これでも甘いくらいだと考えている。「その漏えいが国家の安全保障に著しい支障を与えるおそれのある情報」を漏えいした場合、中国や北朝鮮なら間違いなく死刑だろう。

 またもう一つの当該法案のポイントは「情報を漏えいした者」のみならず「情報を取得した者」にも同様の罰則(懲役10年以下か1千万円以下の罰金)が科せられる点である(特定秘密の保護に関する法律第22条)。これを聞いたら、むしろこれまで罰せられなかった方がおかしいと思う人が殆どではないだろうか。これまで日本は「スパイ天国」と呼ばれてきた。それはスパイが政治家や公務員に金品を供与したり、または脅したりして情報を取得しても罰せられなかったからである。そこでこれに対しても罰則を設けようというのが今回の法案のポイントである。

 多くのマスコミや市民団体は「国民の知る権利の侵害」だと反対運動を繰り広げているが、今回の法律で「特定秘密」に指定される対象は、簡単に言って「外交・安全保障、防衛、テロ対策、危機管理」こういうものに限定されている。決して「知る権利の侵害」に当たるものではなく、国民を危機から守るために必要な国家秘密の漏えいを防止しようとする、いわば当たり前のことを目的としている。

確かに「特定秘密保護」というネーミングが国民に誤解を与えているかも知れない。「スパイ防止法」が無理ならば、「国家秘密漏えい防止法」や「重要秘密漏えい防止法」というような名前にした方がわかり易かったかもしれない。「特定秘密」の「保護」という言葉の使い方が、政府がやましいことを隠そうとしているのではないかという誤解を招きやすいのだろう。しかしネーミングの議論は本質的議論ではない。

 内閣支持率が低下しているという。国会が大詰めを迎える中で、マスコミは本質的な議論を展開して欲しいと思う。国際的なパワーシフトが起こっている中で、日本が日米同盟を維持しつつも、「自主防衛路線」を模索していくことは必要不可欠なことである。そしてその「自主防衛体制」を構築していくためにも、NSCや情報管理、自衛権の議論も現実的視点で冷静に行っていかなければならない。マスコミほどの大きな情報発信力は無いが、私もブログ等で少しでも正しい視点と情報を提供したい。



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● COMMENT ●

全く同感です!

秘密法案の本質は是非議論していただきたいです。出来れば秘密法案の範囲(安全保障、日本の損益にかかわること)を明確にし、国民に余計な不安を与えないようにしていただきたいです。これはマスコミの恣意的な報道の影響もあると思いますので、大変だと思いますが宜しくお願い申し上げます。また、一日も早く武藤内閣が出来ることを期待します!


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プロフィール

武藤貴也(むとうたかや)

Author:武藤貴也(むとうたかや)
昭和54年5月25日、北海道釧路市生まれ。血液型O型。東京外国語大学卒業、京都大学大学院修了(専門は外交・安全保障・国際法)。平成21年「全国公募」で自民党滋賀県第四選挙区支部長に選ばれ、平成24年第46回衆議院議員総選挙で初当選。外務委員会・安全保障委員会所属。麻生派(為公会)。近江八幡市在住。

*滋賀県第四選挙区(東近江市、近江八幡市、甲賀市、湖南市、日野町、竜王町)

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