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「地域主権」という病理 - 2014.05.19 Mon

 数年前から「地域主権」という言葉が流行っている。政権交代が起こった2009年には、民主党がマニフェストで「地域主権」という言葉を最重要テーマとして掲げていた。また私の住む関西では、滋賀の嘉田知事がこの言葉をスローガンに、中央政府に強い口調で物申してきた。「地域のことは地域で決める。国の中央政府はそれを追認し、サポートすれば良い」まるでそう言わんばかりで、国民の殆どもそれを正しいと錯覚したことだろう。

 長いものにまかれるように、自民党政権を含め歴代政府もこの「地域主権」という言葉をしっかりと検証もせずにすすめてきた。政府の予算がそれぞれ大幅に減少する中で、順調に増加しているのは、福祉予算と地方交付金である。現在でも内閣府のHPを見ると、以下のように書かれている。

 「地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる活気に満ちた地域社会をつくっていくことを目指しています。このため、国が地方に優越する上下の関係から対等なパートナーシップの関係へと転換するとともに、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国の在り方を大きく転換していきます。」

 確かに、国がしっかり政治を行わないから、地方がそれを正そうとある種の「ムーブメント」を起こそうとすることは理解できる。しかし、そもそも「主権」とは、統治の独立性・最高性を示す国家の権利(簡単に言えば、国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行う権利)であり、普通歴史的に「国家主権」という言葉でしか使われない。つまりあくまでも「主権」というのは「国家」に帰属するものであり、それを「地域」に移譲することは「国家」を解体することに等しい。まして、地方に力を持たせたうえで、外国人地方参政権を付与するとなると、事は更に深刻な問題となる。

 行政が行う事業を、地域に根ざし、きめ細やかにすることは必要であろうが、それはあったとしても一部の分権(「権限」と「財源」の移譲)にとどめるべきであり、「主権」を地方に移すようなことを認めてはならない。ただでさえ戦後日本では「主権」意識が低いのにもかかわらず、「国家主権」を否定し「地域主権」なるものをしっかりとした定義づけもせず濫用し続けることは、更に国民の「国家意識」を希薄にさせる。

 明治4年(1871年)、261の藩を廃し3府72県がおかれる様になった大改革「廃藩置県」は、「中央集権化」を図るために行われた。なぜ「中央集権化」が必要だったのか。欧米列強のアジア侵略に備え、一致団結し国を強くするためであった。

 今も昔もアジア情勢は変わっていない。中国があり、ロシアがあり、北朝鮮があり、韓国があり、そしてアメリカがある。中国は領海侵犯を繰り返し、北朝鮮は核開発を続けている。言わば常に有事の危機にさらされていると言っても過言ではない。未だそういう時代にあって、国と地域の権限と財源の奪い合いのために、国が解体される、あるいは国の力が弱くなり地方が「わがまま」を言うような状態に陥ってはならない。

 埼玉大学名誉教授の長谷川三千子先生は次のように指摘する。「地方主権というとんでもなく奇妙な言葉が独り歩きしている。これは、日本人から主権という概念がすっぽり抜け落ちている何よりの証拠である。地方は国家にとってどういう役割をもっているか。まさに地方がそれぞれ頑張って国家主権の担い手である自覚を示さなければならない。日本にいったん事があれば、地方は地方として国のために全力を尽くす。これが地方の役割。しかし、どうやら地方主権を主張する人たちはそんなことは考えていない。地域のことは地域で勝手に決める。日本国全体がどんな危機に直面しようと自分達は関係ない、こういう考え方が地方主権という言葉の中にはっきりと現れ出ている。まさに地方こそが国の主権を守る主役にならなければならないという考え方へ転換していかなければならない。」

 私は、国と地方の役割を明確化し、縦割り横割りで非効率な行政を改め、ある部分地方分権を進め、きめ細やかな行政サービスを行えるような改革には賛成である。しかしそれは全て「国家発展」のためであって、「地域エゴ」のためであってはならない。各々地域の情報を把握し、均衡ある国土の発展を成し遂げるためにも国にそれなりに権限と財源を集中させることは必要だ。また、その根底には「国家主権」という概念が常に意識されたもので無ければならないと思う。

 重ねて言うが、地域が「地域エゴ」ばかりを主張してては、国の弱体化につながりかねない。例えば地域がオスプレイ訓練の受け入れに反対することは簡単だ。また3・11で生じた福島の瓦礫の受け入れに反対することは簡単だ。あるいは電力を享受しておきながら、原発そのものに反対することも簡単だ。しかし地域が国全体のことを一切考えず、国全体の利益が損なわれれば結局国を構成している地域も衰えて行くことになる。今地域に欠けているのは、地域として「国のために何ができるか」という視点だと私は思う。「地域の発展は国の発展から」という意識を持ち、地域の発展と国の発展を両輪のごとくとらえて政治を進める、そうした首長が今の日本には必要だと私は思う。私の県では7月に知事選を迎えるが、有権者にはそうした視点を是非持って欲しい。


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プロフィール

武藤貴也(むとうたかや)

Author:武藤貴也(むとうたかや)
昭和54年5月25日、北海道釧路市生まれ。血液型O型。東京外国語大学卒業、京都大学大学院修了(専門は外交・安全保障・国際法)。平成21年「全国公募」で自民党滋賀県第四選挙区支部長に選ばれ、平成24年第46回衆議院議員総選挙で初当選。外務委員会・安全保障委員会所属。麻生派(為公会)。近江八幡市在住。

*滋賀県第四選挙区(東近江市、近江八幡市、甲賀市、湖南市、日野町、竜王町)

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