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「原子力ムラ」は破壊すべきだが、「脱原発」は間違い! - 2012.05.09 Wed

 大地震・大津波による福島第一原発の事故から、全国各地で「脱原発」が叫ばれ続けている。福島県や私の地元滋賀県そして京都府や新潟県の知事らも、近隣原発の再稼働に反対を唱え、メディアでも毎日のように取り上げられている。そして、とうとう今月5日、日本にある原発は全て稼働が停止されてしまった。

 しかし、私は「脱原発」は間違いだと主張したい。

 まず第一の理由に、日本のみが「脱原発」をしたとしても、事故時の放射能飛散の危険を防ぐという観点から言って全く意味が無いことが挙げられる。なぜならば、中国が既に日本に面する海沿いに数多くの原発を建設しているからである。これらが事故を起こせば、仮に日本に一基も原発が無くても、中国発の放射能が黄砂のように日本に降り注ぐことになる。更に中国政府は2020年までに原発の発電容量を現在の7~8倍に急拡大する計画で、現在新規原発28基が建設中、38基ほどの新設も計画中である。このこと踏まえ、評論家の屋山太郎氏は、ヨーロッパの事例を挙げ次のように言っている「ドイツ、イタリア、スイスは福島の事故を見て脱原発を決めたが、実は、フランスの原発で生まれた電気を買っている。この夏、フランスに行ったが、フランス人は笑っていた。原発は事故の危険があるから造らないと、ドイツ人は言っているが、われわれの原発はドイツとの国境近くに並んでいる。原子炉さえなければ安全だと思うのは、駝鳥(だちょう)の平和だ、と」。ダチョウは危険を感じると砂の中に頭を突っ込んで、敵を見まいとする。しかし、そこから危険は全く去っていない。屋山氏は、日本の「脱原発論」を、この「ダチョウの平和」だと主張しているのだ。

 「脱原発」が間違いだと主張する二つ目の理由は、原発の代替エネルギーが無いことにある。日本経済は安定的に供給される電力によって支えられている。しかし原発が停止してしまったら、現時点で原発に代わる発電方法は無いので、当然安定的な電力供給が出来なくなる。確かに今は、地域別電力会社が天然ガスや石油を活用した火力発電の稼動率を高めることで対応しているが、電力の需要が急増する夏のピーク時に必要な電力量を考慮すると、夏には10%以上不足する。特に、原発依存率が50%以上の関西地域は、夏の電力不足が15%に達すると予想されている。そのうえ、昨年の東日本大震災以降、フル稼働している天然ガスや石炭火力発電は、建設から40年以上経過した老朽化施設が大半で、原発よりもはるかに事故が起こる危険性が高い。火力発電が事故で1機でも停止すれば、大規模な停電につながる恐れがある。こんな状況では当然企業も展開先を海外に振り向けるしかない。

 「脱原発」が間違いである三つ目の理由は、日本では既に大地震・大津波に耐えうる原発が開発されていることにある。北海道大学大学院教授の奈良林直氏は次のように主張している。「まず、日本の原発すべてが危ういように報道されていますが、そうではありません。東京電力福島第一原発(F1)の1号機から4号機は事故を起こしましたが、F1の北にある東北電力の女川原発は、大地震と大津波に耐えてきちんと生き残りました。地図で見るとわかるように、こちらの方が震源にもっと近かった」。福島原発の1号機から4号機はすでに古い型で、東北電力の女川原発はもっと新しい。そして中国や米国が現在建設している原発(AP1000型、3・5世代)は更に新しく、福島原発よりもはるかに安全である。具体的に言うと、外部電源なしで原子炉を冷やせる技術を有する。つまりこれは福島第一原発と同じ状況に置かれても、今回起こったような水素爆発もその後の事故も発生しないということを意味する。そして、この米国や中国が建設している世界で最も安全な原発技術は日本の東芝が有するものである。屋山氏は次のように主張している「日本は原発をどうすべきか。日本の技術力を結集して、世界最高の原子炉を開発することである。地震にも津波にも耐え、事故も起きない炉をつくり、世界の原子炉を日本製にすることを目指せ。これは夢物語ではない。日本にしかできない業だろう。」

 「脱原発」が間違いである四つ目の理由は、外国の資源に依存する発電方法は国家安全保障上好ましくないことが挙げられる。1941年に始まった日米開戦のきっかけは、欧米列強の日本に対する「ガソリンの禁輸措置」であった。1941年当時、日本軍の石油備蓄量は約2年分。石油が枯渇すると航空機・軍艦・軍用トラックが使えなくなって戦争を継続できなくなるため、その時点で英米に宣戦布告されれば自動的に敗戦してしまうことから、軍部の強硬派はアメリカ・オランダの石油禁輸措置の経済制裁に対して、「即時開戦論」の激しい反応を示すようになり、戦争に突入していった。従って、日本の歴史からみて、エネルギーを外国に依存することは国家安全保障上好ましくないことが言える。
 
 確かに、「原子力ムラ」は破壊しなければならない。ここで言う「原子力ムラ」とは、電力会社、関連企業、プラントメーカー、監督官庁、大学研究者、マスコミ、業界誌、ヤクザなど原子力関連産業の利権に群がる集団のことを指す。これらは電力の供給を独占し、電気料金を一方的に高止まりさせることによって利益をむさぼってきた悪しき慣習である。今回の福島第一原発の事故は、この癒着構造が安全面での怠慢を招き起こった「人災」であるとする意見もある。従って、「原子力ムラ」は、東電を潰すなどして、ことごとく破壊しなければならない。しかしながら一方で、「原子力ムラ」の問題があるからと言って、原発全てを廃止してしまうのは間違いである。

 昨年7月13日、菅直人前首相が突然記者会見を求めて「将来的に原発に依存しない社会を目指す」と明言したことに発する「脱原発」ブームだが、私は今こそ冷静に原発の議論を深めて欲しいと思う。
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武藤貴也(むとうたかや)

Author:武藤貴也(むとうたかや)
昭和54年5月25日、北海道釧路市生まれ。血液型O型。東京外国語大学卒業、京都大学大学院修了(専門は外交・安全保障・国際法)。平成21年「全国公募」で自民党滋賀県第四選挙区支部長に選ばれ、平成24年第46回衆議院議員総選挙で初当選。外務委員会・安全保障委員会所属。麻生派(為公会)。近江八幡市在住。

*滋賀県第四選挙区(東近江市、近江八幡市、甲賀市、湖南市、日野町、竜王町)

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